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ブレグジットの真相

.22 2019 読書 comment(0) trackback(0)
イギリスのEU離脱の国民投票の結果は、
アメリカのトランプ大統領就任と同じで、
移民反対、ポピュリズムの台頭という流れの中で起きた
というのが一般メディアの論調になっています。
私もなんとなくそう受けとっていましたが、
そうではないと主張する本を最近読みました。

「労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱」
著者はブレイディみかこ。
イギリスの労働者階級の男と結婚し、公営住宅に住み、
保育士をしている女性です。

格差がますます拡大しているイギリスで、
2010年に保守党が政権をとってから、緊縮財政がしかれ、
保育所は次から次へと閉鎖に追い込まれ、失業手当はカットされて、
ついに労働者の怒りが爆発したのがEU離脱国民投票の結果なのだと
著者は言っています。

2冊目が
「子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から」
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ここはまさに英国の地べたです。
十代で子供を産むシングルマザー、子供手当と生活保護だけでは
ろくに子供に朝ご飯も食べさせられない家庭だらけ。
ここでは移民家庭のほうが白人貧困層を差別するのです。
保育の現場から格差と分断の情景をみごとに描き出しています。

今年の全英オープンは68年ぶりに北アイルランド(イギリス領)で開催されました。
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地元の大声援を受けて優勝したシェーン・ロウリーはアイルランドの選手。
イギリスがEUから離脱したら、アイルランドと北アイルランドの間に
国境ができてパスポートコントロールを受けなければなりません。
今日のこの何万人という観客はこの次からは、
パスポートをもってここに来なければならなくなるのです。

江戸時代の松平定信の寛政の改革、水野忠邦の天保の改革は
いずれも贅沢禁止の緊縮財政・デフレ政策で庶民の怒りを買いました。
そのせいでしょうか、
外国では保守党というと緊縮財政を敷くというのが一般的ですが
日本ではなぜか保守政党がインフレ政策バラマキ政策をとります。

おかげで国の借金は世界一という日本ですが、
そのほうがよいという国民の選択が今度の選挙結果なのでしょうね。



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等伯

.15 2019 読書 comment(2) trackback(0)
私は芥川賞よりも直木賞のほうが好きだ。
三人の作家の直木賞受賞作を図書館から借りてきた。
柴田錬三郎「イエスの裔」1951年
山本健一「利休にたずねよ」2008年
阿部龍太郎「等伯」2012年
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一番感激したのが「等伯」。
恥ずかしながらこの本を読むまで
長谷川等伯という画家の存在を全く知らなかった。

戦国時代、能登の国七尾に生まれ、
時の画壇を支配していた狩野派を脅かすまでに上り詰めた画家である。
堺の町に住み利休の知遇を得て、
秀吉に認められ、最後は家康に招かれて江戸に行くまでになった。
こういう天才はだいたい私生活は恵まれないものだが、
彼は先立たれはしたものの良き妻と息子たちに恵まれている。

等伯を特集した日曜美術館(NHK)のYouTubeを発見した。
https://youtu.be/SLY9hoqqPBE
これを観れば小説の中に出てくる絵はほとんど見ることができる。
この番組の中で、
コシノヒロコは「等伯は今のファッションデザイナーのようだ」と言い、
漫画家のおかざき真理は「少女漫画の共感力をもつ」と絶賛している。

この本を読んでからは、等伯の追っかけをやりたくなった。
能登の七尾を訪れてみたいし、京都の智積院(ちしゃくいん)の絵も見たい。
まだまだ当分は死ねない。

哲学者とオオカミ

.28 2019 読書 comment(0) trackback(0)
ある金曜日、NHKラジオ“すっぴん”「源ちゃんの現代国語」で
高橋源一郎が自分で選んだ本の一節を朗読し始めた。

「もしブレニン(狼の名)を家にひとり残しておいたら、
我が家とわたしの所有物は悲惨な結果になっていたに違いない。
そのため、ブレニンを仕事場に連れていくほかなかった。
そしてわたしは哲学の教授だったから、
ブレニンも授業についてくることになった。
わたしが哲学者や哲学についてブツブツと単調な話をしている間、
ブレニンは教室の隅に寝そべり、居眠りするのが常だった。
これは学生たちと本当によく似ていた。
ときどき、講義がことさら退屈になると、
ブレニンは体を起こして、遠吠えをあげた。
こんな習慣があるものだから、ブレニンは学生たちから愛された。
学生たちも、同じことをしたいと思っていたに違いない。」

これを背中で聞きながら私は図書館のホームページで
「哲学者とオオカミ」を検索し、すぐさま予約をかけた。
予約順位1位。
やった!
今では相当数の人が予約待ちをしていることだろう。
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図書館の検索ページのコメントは
「気鋭の哲学者が仔オオカミと出会い、共に暮らした驚異の報告。
野生に触発されて思考を深め、人間についての見方を一変させる思想を結実させる。
野生と哲学の対話から見えてくる、人間という存在の新たなあり方。」
となっている。

著者マーク・ローランズ(Mark Rowlands)はアラバマ州
(フロリダ半島の付け根のメキシコ湾に面した州)
の大学の准教授でその時まだ20代。
大学のラグビーチームに属して遠征試合にも必ず狼を帯同していった。
著者の身長は175cmで体重が91kgだときくとデブを想像するが、
体脂肪率は8%でベンチプレスでは143㎏を揚げたという。
そうでなければ、肩の高さが90cm、体重が68kg、
足の大きさは大人の拳ほどもあるオオカミを制御し、
一緒に毎日ランニングはできないだろう。
(ただし、ブレニンを綱につないだことはほとんどない)
著者は、その後南アイルランドの海岸近くの農場のそばに移り
5年間大学教授と著作活動をし、
さらにロンドン郊外のウィンブルドンのゴルフ場のそばに移り住み、
オオカミと一緒にうさぎ狩りを楽しんだ。
最後は南フランスのラングドックで狼と一緒にパン・オ・ショコラを食べ、
老いた狼はここで癌にかかり死に、その地に埋葬された。
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この本はオオカミとの生活物語でもあるが、
圧倒的に哲学的な思索を述べている部分が多い。
曰く
「一般的に見て、
群れ生活をする(社会的な)動物の脳は、
単独生活をする動物より大きい。
脳の大きさの増加は、
群れ生活をするようになった原因ではなくて、
群れ生活をしたことの結果である。
社会的動物は物事の関係だけでなく、
ほかの個体間の関係も見抜かなければならない。
サルは進化の途上で、
嘘をつく能力と嘘を見抜く能力を発達させ、
仲間を出し抜くようになった。
陰謀と騙しは、
類人猿やその他のサルがもつ社会的知能の核をなしている。
なんらかの理由で、オオカミはこの道を進まなかった。」
などなど。

私が人を出し抜いて予約順位1位で本を手に入れようとしたのは、
人間がまだサルの時に獲得した知恵だったのだ。

著者はこの本が売れたおかげで一躍有名人になり、
高給で招聘され現在はマイアミ大学の哲学教授になっている。

YouTube にオオカミとジョギングしている著者を見つけたのでご参考まで。

ヒトのオスは飼わないの? 

.17 2019 読書 comment(0) trackback(0)
米原万里はヒトのオスは飼わないまま56歳でこの世を去った。
しかしネコ6匹、ヒト2匹、イヌ1匹との生活を続けて、
この楽しいエッセイを残してくれた。
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私は中学生から高校生にかけて黒猫を一匹飼ったことがあるだけなので、
ペットが複数になると、飼い主の寵愛をめぐってペット間で競争が起き、
すねて家出をしたり、喧嘩をしたり結構な騒動が持ち上がることを初めて知った。
新しい猫を連れてきたときは、古い猫を2倍ハグハグしてやる必要があるのだとか。
旅行に出かける時に、施設に預けるとストレスが溜まって病気になるらしい。
私たち夫婦がペットを飼わないのは旅に出かけられないからだ。
猫好き、犬好きにお勧めの本である。

コーカサスの金色の雲

.17 2018 読書 comment(0) trackback(0)
1944年。500人の孤児がモスクワから
人影の消えたチェチェンの村に移送された。
食べることにすべての知恵をそそぐ孤児たち。
強制連行によって奪われた地の回復をかけて
ロシア人への攻撃を繰り返すチェチェン人パルチザン。
戦争のなかで真っ先に生きる望みを絶たれる
社会の除け者たちの姿を作家の少年院体験をもとに
記録した真実の物語。(横浜市立図書館の解説)

作者のプリスターフキンが自らの体験をもとに書き上げたこの作品は、
チェチェン民族の強制移住に触れているため発表を許されなかったが
地下でコピーが回し読みされていた。日の目を見た後は映画化もされている。
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生まれて初めて山というものを見た感動。
畑から盗んだ生のままの野菜を腹いっぱい食べて全員が下痢をする。
なぜか到着したコーカサスの村には誰も住んでいない
1944年人口の半分の25万人のチェチェン人がスターリンによって
カザフスタンへ強制移住させられたことなど、子供たちは知る由もない。

チェチェン紛争というと、たいていの解説は、
1991年のソ連解体とその後のチェチェン独立運動、ロシアの弾圧、
現在まで続くチェチェン人のテロという風にしか説明されないが、
それ以前18世紀からの古い古い怨念が続いているのだ。

何でこんな本を読んだかというと、
米原万里がその本のなかで紹介していたからである。
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中でも一番面白かったのが「魔女の1ダース」。
彼女の本には下ネタが多いいが、
どうもそれはロシアの小話に下ネタが多いせいらしい。

「マイナス50℃の世界」も捧腹絶倒。
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マイナス50℃の世界では、つららも雪合戦も存在しないのだ。
屋外にしかないトイレで女性がおしっこをするとどうなるか。

これらの本を読んで一番記憶に残ったことは、
どうもロシアのトイレは非常に汚いらしいということだ。
いつかは行って見たいと思っているサンクト・ペテルブルグの
エルミタージュ美術館のトイレも汚いらしい。


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