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哲学者とオオカミ

.28 2019 読書 comment(0) trackback(0)
ある金曜日、NHKラジオ“すっぴん”「源ちゃんの現代国語」で
高橋源一郎が自分で選んだ本の一節を朗読し始めた。

「もしブレニン(狼の名)を家にひとり残しておいたら、
我が家とわたしの所有物は悲惨な結果になっていたに違いない。
そのため、ブレニンを仕事場に連れていくほかなかった。
そしてわたしは哲学の教授だったから、
ブレニンも授業についてくることになった。
わたしが哲学者や哲学についてブツブツと単調な話をしている間、
ブレニンは教室の隅に寝そべり、居眠りするのが常だった。
これは学生たちと本当によく似ていた。
ときどき、講義がことさら退屈になると、
ブレニンは体を起こして、遠吠えをあげた。
こんな習慣があるものだから、ブレニンは学生たちから愛された。
学生たちも、同じことをしたいと思っていたに違いない。」

これを背中で聞きながら私は図書館のホームページで
「哲学者とオオカミ」を検索し、すぐさま予約をかけた。
予約順位1位。
やった!
今では相当数の人が予約待ちをしていることだろう。
IMG_2351 (480x320)

図書館の検索ページのコメントは
「気鋭の哲学者が仔オオカミと出会い、共に暮らした驚異の報告。
野生に触発されて思考を深め、人間についての見方を一変させる思想を結実させる。
野生と哲学の対話から見えてくる、人間という存在の新たなあり方。」
となっている。

著者マーク・ローランズ(Mark Rowlands)はアラバマ州
(フロリダ半島の付け根のメキシコ湾に面した州)
の大学の准教授でその時まだ20代。
大学のラグビーチームに属して遠征試合にも必ず狼を帯同していった。
著者の身長は175cmで体重が91kgだときくとデブを想像するが、
体脂肪率は8%でベンチプレスでは143㎏を揚げたという。
そうでなければ、肩の高さが90cm、体重が68kg、
足の大きさは大人の拳ほどもあるオオカミを制御し、
一緒に毎日ランニングはできないだろう。
(ただし、ブレニンを綱につないだことはほとんどない)
著者は、その後南アイルランドの海岸近くの農場のそばに移り
5年間大学教授と著作活動をし、
さらにロンドン郊外のウィンブルドンのゴルフ場のそばに移り住み、
オオカミと一緒にうさぎ狩りを楽しんだ。
最後は南フランスのラングドックで狼と一緒にパン・オ・ショコラを食べ、
老いた狼はここで癌にかかり死に、その地に埋葬された。
哲学者とオオカミ (480x312)

この本はオオカミとの生活物語でもあるが、
圧倒的に哲学的な思索を述べている部分が多い。
曰く
「一般的に見て、
群れ生活をする(社会的な)動物の脳は、
単独生活をする動物より大きい。
脳の大きさの増加は、
群れ生活をするようになった原因ではなくて、
群れ生活をしたことの結果である。
社会的動物は物事の関係だけでなく、
ほかの個体間の関係も見抜かなければならない。
サルは進化の途上で、
嘘をつく能力と嘘を見抜く能力を発達させ、
仲間を出し抜くようになった。
陰謀と騙しは、
類人猿やその他のサルがもつ社会的知能の核をなしている。
なんらかの理由で、オオカミはこの道を進まなかった。」
などなど。

私が人を出し抜いて予約順位1位で本を手に入れようとしたのは、
人間がまだサルの時に獲得した知恵だったのだ。

著者はこの本が売れたおかげで一躍有名人になり、
高給で招聘され現在はマイアミ大学の哲学教授になっている。

YouTube にオオカミとジョギングしている著者を見つけたのでご参考まで。

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