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日本<汽水>紀行

.28 2011 読書 comment(0) trackback(0)
「日本<汽水>紀行「森は海の恋人」の世界を訪ねて」
畠山重篤(しげあつ)著2003年9月 文芸春秋発行を読んだ。

同氏の著書「牡蠣礼賛」(文春新書)を以前読んで感銘を受け、
いずれこの本も読もうと思っていたのである。
カキ養殖の権威であり、フランスからも相談が来るというほどの人である。
宮城県気仙沼の舞根湾でホタテやカキの養殖業を営みながら、
いわゆる「森は海の恋人運動」推進者で、
漁民による広葉樹の植林運動をされている。

汽水域とは淡水と海水が混じり合う水域を指す。
河川水が注ぐ海、汽水域はいまでも海藻、魚介類の宝庫である。

鹿児島湾と東京湾の両湾の面積はほぼ同じだが、
どちらの漁獲量が多いか。
青々とした水のきれいな鹿児島湾か、違う。
汚れた海の東京湾のほうが、漁獲量は鹿児島湾の三十倍もあるのだ。
東京湾には大きな川が十六本流入しているが、
鹿児島湾は大きな河川が流入していないためである。

汽水域が漁獲量が多いのは、川から海に供給される鉄分の量の差による。
海には鉄分が極端に少ない。
鉄分がないと植物は生長できない。
森林の葉が落ち、それが腐る過程でできるフルボ酸鉄が海に流れ込む。
これにより、光合成が活発になり植物プランクトンが増殖する。
河川水が流れ込む海とそうでない海とでは植物プランクトンの発生量が
約三十倍から百倍違うのだ。

森林→腐葉土層→フルボ酸鉄→植物プランクトン→
→動物プランクトン→小魚→カタクチイワシ→カツオ、マグロ

これが海の食物連鎖である。
もちろん牡蠣などの貝類も植物プランクトンを旺盛に食べる。

こうした自然の食物連鎖を人間が断ち切ってしまうのだ。
森林の乱伐と荒廃、ダムの建設、堤防の建設と干拓、埋め立て
など、人間が汽水域を消滅させているのだ。

島根県出身者の私は、中海干拓と宍道湖のシジミの減少の記事に感銘を受けた。
「私はシジミと棲みたい」という運動を島根大学の経済学の先生がやっているのだ。
それ以外で私の興味を引いたのが、
諫早湾の堤防閉鎖による有明海の死滅、
屋久島の乱伐による消えたトビウオ
間伐材の杉丸太を使ったのり面の棚田工法、いわゆるグリーンベンチ工法
などであった。

そうした畠山さん達の努力の成果を、今回の大津波が根こそぎ奪ってしまった。
牡蠣養殖場はすべて破壊され、
宮城産の牡蠣が復活するのは、早くても5年はかかるらしい。
日本中の牡蠣養殖業者は宮城県で採取した種牡蠣を買っていたので、
今後しばらくは東北地方以外の牡蠣の生産も落ち込むらしい。

フランスの牡蠣が病気で、
再び宮城種の種牡蠣を導入するかという話もあったらしいが、
それどころではない。

私の大好きな牡蠣はこれから高値の花になるかもしれない。

(注)畠山重篤さんのブログ:
リアスの海辺から~カキ爺さんのつぶやき~
http://ameblo.jp/mizuyama-oyster-farm/
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