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パスツールの国

.29 2010 フランスの生活 comment(2) trackback(0)
 ブルターニュに赴任して最初に心配するのが子供の病気である。

こういうときは先輩の奥様方のアドバイスが頼りだ。
「ゼネラル医を決めたほうがいいわよ」ということで
我が家は歩いて3分の隣のアパルトマンのお医者さんにした。
フランスでは、かかりつけのゼネラル医にまず見てもらい、
手に負えなければ専門の医者に紹介状を書いてくれるシステムになっている。

いきなり大きな総合病院に行ってもダメで、かかりつけの先生は誰かと聞かれる。
確かにかかりつけの先生は、カルテを維持しているので、
過去の病歴や、アレルギーは先生に聞くのが一番早いのである。
第一そんな事を聞かれてもフランス語でまともに答えられる日本人はいない。
医療用語は難しいのだ。

日本語の医療用語だって難しい。
外国人の修習生が日本の看護師の試験に合格するなどというのは、
フランスで暮らしたことのある日本人から言わせると、
不可能としか言いようがない。

医者に関しては、不満もあるが、
圧倒的に「お世話になった。やはりパスツールの国だね」
と言って帰国する日本人が多い。

同僚の一人は、送別会のあいさつで
「これからフランスのほうに足を向けて寝られませんね」と言いながら帰任した。
彼は、体がだるい、背中が痛いといってよく会社を休んだのだが、
フランス人の医者も原因がよくわからなかったらしい。
何回目かの診察の時、その医者がひらめいたらしく、
パンツを脱げと言って、いきなり後ろをズブッとやられた。
触診の結果、腸に大きな腫瘍ができていたことが発見された。
当然すぐに専門病院に移されて、手術し、事なきを得たのである。

私も、フランス人の医者には本当に感謝している。
下の息子がカップラーメンの湯を胸にかけてやけどをして大騒ぎした時のこと、
先生が当時としては最新の絆創膏を処方してくれたことである。
家内はこの絆創膏は日本で見たことがないと言っていたし、保険が利かずに高かった。
効き目はすごく、おかげで、いまではやけどの跡はほとんど残っていない。

私自身は、会社の健康診断の時に悪乗りして、面倒を見てもらった。

ひとつは、咽喉のわきにニキビが発達して膿胞ができた時、
これを取り除くのと同時に、鼻の上のホクロがやけに大きくなってきて目立つので
これも一緒に切ってほしい、と頼んだ。いいよ、ということでいとも簡単に取ってくれた。
しばらくは絆創膏をはって出勤した。
皆気が付いていたのだろうが何も言わない。

あるとき、同僚の日本人が鼻にやはり絆創膏を貼っている。
彼は私のホクロより目立つ大きな奴を鼻につけていたのだが、
その部分に絆創膏を貼っているのだ。

彼はにやにやしながら言った。
「豊栄さんが絆創膏を貼っているのを見て、私もやりましたよ。
すっきりしましたね。目の前の景色がよくなりました」

もう一つは、ピロリ菌である。

私はフランスに赴任する少し前から胃がしくしく痛むことがあった。
ときどきは相当にさしこみ、胃潰瘍かなとも思ったが面倒なので放っておいたのである。
ある時日本の新聞(2日遅れでパリから配達)で、ピロリ菌なるものが発見され、
日本人のかなりの人が罹っているという記事であった。
それに引き続いて、しばらく特集記事が組まれており、
日本では保険が利かないが抗生物質で除去できると書いてあった。

家内はこの記事を読み、
「あなた、これに罹っているんじゃない? 私心配しているのよね。
今度の健康診断の時に先生に言ってみれば」という。

健康診断でこれを申告すると、
胃カメラを飲めということで専門医への紹介状を書いてくれた。

この専門医の先生は、かなりお年を召した先生だったが
「ジャポネか。エイケを知っているか」といきなり聞いてきた。
「エイケ?? すみません、知りません」
そんな会話の後、胃カメラの診断が始まったのだが、これが苦しいのといったらない。
ケーブルの直径が2cmくらいありそうで、
差し込み口のようなものを口に咬まされて、挿入されるのだが、何しろ苦しい。
涙は出るは、おえっと来るはで本当に死にそうだった。
当時の胃カメラはまだそのくらいの太さだったのである。

二週間後、検査結果が出て、やはりピロリ菌がいるという。
強力な抗生物質を処方してくれて、これを薬局で買って2週間にわたって飲めという。
(フランスはその当時から完全な医薬分業であった)それが終わったら、
もう一度結果をチェックするから来いという。

この薬は飲んだのであるが、結果の検診は無視することにした。
もう二度と胃カメラは飲みたくなかったからである。
先生から検査に来いという手紙が来た。
その手紙の中にHeike(平家物語)が引用してあった。
何だ、ヘイケ物語なのか、エイケ、エイケというから何のことかわからなかったのだ。
エイケとゲンジとか言ってくれるとわかったかもしれないのに。
フランス語でHを発音しないとわかってはいても、
日本語にもそれが適用されるとは考えなかったのだ。

手紙は無視して、検査には行かなかったが、
その後胃の調子は良くなり、シクシク痛むことがなくなった。

一昨年、健康診断で胃が引っかかり、15年ぶりに胃カメラを飲んだ。
さすがにこの間の技術進歩は素晴らしく、ケーブルはすごく細くなっていた。

「ピロリ菌はいませんね。ほら、胃壁の健康な部分にはしわがあるが、
この部分はつるつるしているでしょ。ここは昔ピロリ菌が住んでいたところだよね」
と先生は写真を見せながら説明してくれた。

フランスのエイケ先生ありがとう。
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ココン
私も胃カメラの進歩を有難く思った口です。
医療検査器具の多くが、日本マークで、しばしはお医者さんたちの日本技術に対する感嘆の声を聞くのは、やはり嬉しいものです。
2010.04.30 02:25
豊栄のぼる
ココンさん、
本当に某O社に感謝。今だったら、胃カメラはちゅうちょしませんがね。日本人の腸が長いというのは初めて知りました。草食系なんですね。
2010.04.30 09:48

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