FC2ブログ

沈黙は金

.27 2010 フランス語 comment(0) trackback(0)
フランスではなまじっかフランス語を
しゃべれないほうが得なこともある。

ブルターニュの会社では
日本から送ってくる製品の図面をフランス語に翻訳するため、
女性の駐在員二人を日本から派遣していた。
日本の一流大学のフランス語学科を卒業した
フランス語ぺらぺらの女性達である。
翻訳以外でも彼女たちには駐在員は非常にお世話になっている。

ある時、そのうちの一人が交通違反で
お巡りさんに捕まったらしい。
「わかーんない」という感じで困ったような顔をして
彼女は最後まで一言もしゃべらなかったそうである。
同乗者は日本から遊びに来た友人で、
やはり気配を察して無言を通したとのこと。
結局お巡りさんもあきらめて解放してくれたそうである。

この物語は伝説として語り伝えられており、
先輩が酒の席で話してくれたことである。
「さすがだね。あれだけフランス語がうまければ、
普通何か反応を示すもんだがね」
「若くて、美人は得だね。
俺たちみたいな男がそれをやったら絶対許してくれないね」


日本人観光客が外国旅行をして成田に帰ってきた時、
外国で買ってきたものを申告して
限度を超える部分については関税を払わなくてはならない。

これと同じことで、フランス在住者が出国して
外国または日本でお土産を買ってきたら
シャルルドゴールの税関で申告しなくてはならない。

税関の前を通る時は何にも申告するものがなければ
そのまま通り抜ければよい。

税関の人は、何か小さい声で呟き続けているらしい。
日本の観光客は騒音の一部としか聞こえないので、
そのまま注意もせずに通り過ぎてしまう。

ところが、なまじフランス語ができると、
このつぶやきが風の音ではなく意味を持った音になってしまうので
つい反応を示すのだ。


そうすると敵は目ざとくそれを見逃さず、
「ムッシュー」と呼びとめる。

こうなったらもうお終いである。
全ての荷物を開けられて時間をかけて調べられる。
仮に何も申告するものがなかったとしても時間がもったいないのだ。
大抵は日本でしか買えない秋葉原製品を持っているもので、
ましてやそれが買った時のまま化粧箱に入っていたりしたら
あきらめるしかない。
これはフランスから持ち出した中古品ですとは言えない。

大人は十分わきまえているのであるが、
子連れの時は要注意である。
子供の耳は大人よりよくフランス語を把握する。
「お父さん、何か言ってるよ」
慌てて子供の口をふさいでももう遅い。
「ムッシュー」とくる。

子連れでやられた人は何人もいる。

ある人などは、当時まだ珍しかった
ノートブックパソコンを買ってきたところ、
これは電子タイプライターだといわれ、
通常の輸入税のほかにアンチダンピング税を払えといわれた。
この件はEC委員会と提訴中の案件で、
彼も会社が主張している理由をるる述べて、
これは電子タイプライターではないと主張したのだが、
「文句があるならちゃんと訴えろ、とりあえずこれは没収する」
と言われて泣く泣く払ったそうである。
いつパソコンを取り返せるか分からないからである。

後に、グループ会社全体で取り組んだこのアンチダンピング訴訟は、
最終的に税を払うことなく終結した。
ただ一人彼が払っただけである。

子連れで旅行するときは、
よくよく因果を含めておかなければならない。


(追伸1)
税関のお役人は、融通の利かない頭の固い人ばかりではない。
私たちがイギリスでウェッジウッドを買った時、
店の人が免税手続きをしてくれて、
「お国に到着した時この書類を出せば、税金を返してくれますよ」
というので、
フェリーでブルターニュのサン・マロに着いた時この書類を出した。
税関吏は、「貴方はどこに住んでいますか」と聞いてきた。
「レンヌです」
「貴方が日本に住んでいれば、この書類は有効ですが、
EC域内に住んでいるとこの制度の適用はありません」
「厳密に言うと、イギリスの付加価値税は15%で、
フランスは18.6%なので、貴方は3.6%追加で付加価値税を
払わなくてはなりません。」
「ええー?」
「申告を何もしなければ、見なかったことにしますが」
「ありがとう、ムッシュー」
と言って事なきを得ました。
ブルターニュの役人は優しいですね。

(追伸2)
フランス語というのは不思議な言葉で、
遠くからでもよく聞こえます。
私がフランス語をしゃべる時は自然に半オクターブ
声が低くなるので、聞こえにくい言葉だと思っていましたが
逆でした。

ロンドンに行った時のこと、
人ごみの中で当然まわりは英語ばかりで、
それはただの騒音としか聞こえなかったのですが、
突然フランス語が耳に飛び込んできました。
周りを見回すと、10mくらい離れたところに
フランス人カップルがいました。

フランス語は音域というかヘルツが違うのでしょうか。
それとも、石川啄木の歌
「ふるさとの訛りなつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」
の類なのでしょうか。
イギリス旅行中に何回かこういう経験がありました。

関連記事
スポンサーサイト



  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackbackURL:http://rennais.blog6.fc2.com/tb.php/97-64c265ed